暗号資産(仮想通貨)Symbol・NEMのハードフォークが2021年11月8日にSymbolコア開発者であるHatchet(ハチェット)・Jaguar(ジャガー)・Gimre(ギムレ)の3名により発表されました。
ハードフォークと聞くと、ビットコインから分裂したビットコインキャッシュやイーサリアムから生まれたイーサリアムクラシックなど暗号通貨の「対立行動による分裂」がきっかけで起こることが通例だと思います。
しかし、今回の「SymbolとNEM」による2つのハードフォーク「キプロス(Symbolハードフォーク名)」と「ハーロック(NEMハードフォーク名)」は暗号通貨の分裂や新たなコインが生まれるというわけではありません。
では何故ハードフォークを行わなければならなかったのでしょうか?
今回はSymbol・NEMの歴史を探りながらコア開発者3名とコミュニティ(投資家・活動家)が目指していく将来のビジョン。
そして、ハードフォーク後のSymbol・NEMにはどのようなプラス要素が待っているのかを分かりやすく解説していきます。
・仮想通貨Symbol・NEMの将来的な価値を知りたい人
・ハードフォークにより何が変わるのかを知りたい人
・日本のコミュニティに参加しながら投資をしたい人
仮想通貨 NEM・Symbol 今までの歴史
今回のハードフォークの真意をお伝えする前にまずはSymbol・NEMの歴史に軽く触れておく必要があります。
仮想通貨NEMが誕生したのは今からおよそ7年前の2015年3月です。
NEM(ネム)は「New Economy Movement」の略で「新しい経済活動」を意味します。
そのビジョンの一貫として経済的自由や平等主義を軸とした分散型プラットフォームを目指していました。
NEMを多く保有した一部の投資家だけが利益を得るのではなく、平等に多くの投資家にチャンスと利益を得られる機能を採用しています。
NEMのセキュリティは高く、またPOI(Proof of Importance)というNEM独自のトランザクション機能があり保有者の貢献度(保有量や保有期間)などによってNEMが報酬として入るマイニング機能があります。
これにより、投資家のNEM保有率が多くなれば自然に供給率も高くなるシステムになっています。
2017年~2018年、NEMはビットコインやイーサリアムに続き、日本で絶大な人気銘柄となり日本円にして最高価格250円を付け話題にもなりました。
2017年には某国内の仮想通貨取引所でNEMハッキング事件が起こりました。
しかしこれは取引所側のセキュリティの情弱性が原因であり、前項でも述べたようにNEMには元々高いセキュリティや実社会で扱われるほど優秀な技術が備わっています。
その後、2021年3月にはNEMの処理速度やセキュリティ機能を大幅に向上させたカタパルトと称されたハイブリッドブロックチェーンSymbolがローンチされます。
Symbol(シンボル)について知りたい方はこちらの記事をどうぞ⇩
NEMグループの将来性や資金管理への不満
NEM(ネム)は前項でもお伝えしたとおり経済的自由や平等性を目指した非中央集権型のプラットフォームです。
しかし、NEMやSymbolを世界に普及させるためにはコミュニティや技術者だけの力では到底及びません。
そこにはマーケテイングや資金管理を任せるヘッジファンドが必要でした。
そこで誕生したのがNEMグループ、通称NGLです。
NGLは2013年~2021年7月までNEM・Symbolの普及活動やマーケティングをしてきた団体です。
NEM・Symbolの活動資金に関しては「NENトラスト」という団体によって管理されてきました。
しかし、このNEMトラストの資金運用に関して何に使われているのか我々コミュニティ(投資家)には分からず不透明な部分があり、不満の声が上がっていました。
またNGLのブランディングビジョンとしてSymbol・NEMは「企業向けに普及させたい」という意図があったが、これについても企業との提携や事業計画が不透明なものばかりが続きコミュニティの不信感を煽ったのです。
簡潔に言ってしまえば平等を謳っていたにもかかわらず後に管理する団体が現れ、その資金管理が不透明でありコミュニティを通してSymbol・NEMを普及させる姿勢が見られなかったという事です。
また一部のコア開発者は「Symbol・NEMはコミュニティが主導となり構築していくべき」という理念があったことから、そもそもコア開発者側とNGLの考えが相違していたことも水面下ではあったようです。
NGLの解散・そして新たなる船出
ジレンマ起きていた2021年7月にNGLが突如、空中分解しました。
NEM・Symbol保有者(コミュニティ)としては運営が急に解散したわけですから裏切られた想いです。
このことからも、NGLはNEM・Symbolを企業向けにアピールして運営側が利益を得る仕組みを作りたかったようにも考えられます。
NGL解散後、残ったコア開発者3名のHatchet(ハチェット)・Jaguar(ジャガー)・Gimre(ギムレ)は「Symbol・NEMはコミュニティ(人間)主導であるべき」という指針を改めて掲げます。
そして「スペースパイレーツ」という名で新たにSymbol・NEMを普及させていこうとします。
Symbol・NEMは日本人の保有者(コミュニティ)が多いため、コア開発者たちはTwitterなどで日本のコミュニティに自分たちの考えや指針について議論しました。
スペースパイレーツ発足の段階ではコミュニティに受け入れてもらえない所があったものの
コア開発者のハチェットから送られた「スペースパイレーツの指針」が提示され、コミュニティとの価値観や距離が次第に近づいていきます。
「スペースパイレーツ」を直訳すれば「宇宙海賊」ですが、一般的に想像できる他の島国に渡来し宝を奪い去るようなイメージではなく
コミュニティ(乗組員)が主導となりキャプテンを決め自分たちの意見や価値観・文化を自由に表現していく民主主義的な経済圏を築いていくための船出を意味しました。
再出発するための2つのハードフォーク
コア開発者ハチェットはNGLの管理から離れ、今までの過ちを起こさぬようNEM・Symbolの全コミュニティにTwitterにてハードフォークというかたちで投票を呼びかけます。
なぜハードフォークをする必要があったのか?
そこには大きく分けて2つの理由があったためです。
ひとつは「スペースパイレーツ」で掲げた指針、「NEM・Symbolは人(コミュニティ)が主導となり民主主義的に経済圏を築いていく」
これをコミュニティに改めて同意してもらう必要があったから。
そしてもう一つは、今までNEMトラストが管理していたNEM・Symbolのプロコトル資金を一度バーン(焼却)させて再生成するという目論みがありました。
確かにSymbol・NEMをさらに開発・普及させていくための資金はとても重要であり、有効かつ透明性のあるファンドに管理してもらった方が良いことは明白です。
以上の理由からコア開発者ハチェットは全コミュニティにNEM・Symbolそれぞれのノードのアップデートによる意思表示を投票というかたちで行いました。
そして見事、2021年11月12日にSymbolハードフォーク「キプロス」の成功
同年11月30日にNEMハードフォーク「ハーロック」が成功しました。
主に日本が中心のコミュニティですが今回のハードフォークに対する結束力が本当に素晴らしいなと改めて感じました。
しかし、コア開発者もNEMトラストから資金を取り戻すのには容易な事ではなかったでしょう。
最終的にはNEMトラストとの同意の上、プロコトル資金をバーンし再生成することが出来ました。
Symbol・NEMハードフォーク後の新体制
ここからはハードフォークによりSymbol・NEMの管理体制が、これからどのように変わっていくのかを説明していきます。
米ヴァルキリー(Valkyrie)とコア開発者とのプロコトル資金管理
ここがハードフォーク後の一番の注目点であり重要な部分でした。
米ヴァルキリー社は5億ドルを超える運用資産をもつ米国では有名なファンドです。
主にPolkadotやDashなどの名だたる仮想通貨をプロコトルと連携をし欧米を中心に各取引所に上場の支援をして流動性を提供してくれます。
Symbol・NEMはハードフォーク後にこの米ヴァルキリー社と契約を結ぶことが決まっています。
コア開発者と米ヴァルキリー社のマルチシグ(共同)での資金管理なので安心して任せられるのではないでしょうか。
またヴァルキリーがSymbol・NEMのアセットマネージャーとして参加することになり、将来的には米国一の仮想通貨取引所とも言われるCoinbase(コインベース)へのSymbol・NEMの上場にも期待が持たれます。
そうなれば自ずとSymbol/XYMそしてNEM/XEMの価格も大きく高騰していくでしょう。
NEM・Symbolはもともとアジア圏、特に日本中心の投資家が中心なので、それが欧米に拡大するとなると、どれほどの影響が出てくるのか今後がとても楽しみになってきますよね?
Symbolシンジケート
さらにコア開発者たちは新たな3つの拠点を設立するために動いているようです。
以下、コア開発者ハチェットのヴィジョンペーパーより抜粋
Symbol、サブチェーンに関連する技術の研究開発を目的に501c3(内国歳入庁から税法上の認証を得て、非営利法人として寄付行為に対する税制上の優遇措置が認められる団体)を米国デラウェア州に設立予定。
米国を拠点とする数少ない仮想通貨NGOを目指します。
リンガフランカ
コア開発者たちはバミューダに拠点を置き事業を立ち上げ、取引所、マーケットメーカー、流動性
プロバイダーとの連携に注力する予定です。
またこの事業体はクアドラティック・ファンディング(民主的資金調達モデル)を採用しこれをSymbol・NEMにも導入する予定。
コア開発者たちはコミュニティ主導の資金調達を行うことを望んでいます。
不死鳥財団
Symbolシンジケートに並んでスイスに財団を設立する予定。
この財団はSymbol・NEMのジェネシスブロック資金の保管と、投票ノードやテストネットのインフラの運営を行う。
最終的にはSymbol・NEMのエコシステム以外から外部の専門的な知識を提供してくれる人材を迎えたいと考えています。
NEMのサブチェーン化
今回のハードフォークの鍵となった部分がコア開発者によるNEMのサブチェーン構想です。
元々NEMはパブリックチェーンとして生まれ、その後アップグレードしたSymbolがローンチされました。
アップグレードしたSymbolが注目される最中、NEM(NIS1)の必要性が薄くなっていき通貨の価格も大幅に下落していきました。
しかし、コア開発者はNEMをオープンソース化し、Symbolのサブチェーンとして機能させることを提言します。
サブチェーンとはメインチェーンであるSymbolの処理速度の向上、画像や動画などをより多く記録できるようにするためためのメモリーカード(機能拡張)といったところでしょうか。
例えばNFTプラットフォームでの手数料を減らしたり、より多くの画像やデータを保管することも可能となります。
2022年現在イーサリアムなどはサブチェーンが存在しないためトランザクション処理やガス代の高騰などで本来のパフォーマンスが出せていない苦しい状況が続いています。
Symbol・コア開発者のハチェットは元々イーサリアムの開発の携わってきた経験の方です。
このことからも、NEM(NIS1)をSymbolのサブチェーンにすることでSymbolの可能性を最大に引き出せるというプランが以前から持っていたのではないでしょうか?
将来的にNEMの他にもいくつかのサブチェーンが増えてくればSymbolが世界でも必要とされる日が近いのではないかと感じます。
2022年~2023年はまさにSymbol・NEM(シンボル・ネム)にとって大きな飛躍の年になりそうです。